宮崎市でのセッションのレポートです。

2023年10月21日(土)~23日(月)、宮崎市の「Wai-o-pipi(ワイ・オ・ピピ)」様で、アートセラピーセッションを開催しました。宮崎でのセッションは久しぶりでしたが、お陰様で多くの皆様にご参加いただきました。改めて御礼申し上げます。

今回のセッションに参加された皆様が描かれた画を、私・黒須のコメントと共に紹介させていただきます。こうして改めて拝見すると、画について私がコメントした際に、「えっ!」と驚かれたり、「ニコッ」と微笑まれたりと、皆様がいろいろな表情をされたことが思い出されます。受け止め方はそれぞれで異なると思いますが、皆様の今後の暮らしの“指針”の一つにしていただければ幸いです。

宮崎でのセッションは、今後もまた開きたいと考えております。その際は、ぜひご参加いただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
また、皆様にお会いできますように! どうもありがとうございました。

  • それぞれの方の、他の画や、以前描かれた画も参考にさせていただいております。
  • 描かれた方の同意を得て掲載しています(著作権は描かれた方にあります)。
  • 各画の転載は禁止します。また、お問い合わせにも応じかねます。

1.Aさん(男性)が描いた画

【テーマ】子供の頃、うまくいかなかったこと

画像:Aさんの画1_置換え

《ご本人のコメント》
野球の経験が無かったので、どうすれば打てるか分からなかった。

〔画の注目ポイント〕
自分が描かれていない。画用紙の左半分のみを使用している。全体に動きが無い。

《黒須より》
バットとグローブに線の動きがありません。「野球をした経験がない」ということなので、どうバッティングしたらいいのか分からず、身体の「納得感」が得られないのでしょう。
物ごとをうまく進めるために、自身が「納得」できるだけ時間をかけることは、とても意味のある行動です。経験を重ねて「うまくいく確率」を大きくすることができれば、現実での応用が広がります。「様々な出来事はどこかで繋がっている」と感じる人ほど、「納得」するまでには多くの時間が必要になりますが、その結果、行動と思考が体系化され、他者からの理解と共感も高まります。

*****

【テーマ】抽象的に自分のエネルギーの感覚を同じ画用紙に3回描く

画像:Aさんの画2_置換え《ご本人のコメント》
同じように見えても、自分にはその都度、エネルギーの変化を感じている。

〔画の注目ポイント〕
線(色と強弱)と形(直線、曲線)の変化

《黒須より》
画像では少々見づらいですが、1回目に描いたのは細い青の線、2回目に描いたのは紫や青の線です。3回目の描線は赤とオレンジで、太くなり、曲線が増えています。「自信を持つための確率」を徐々に高め、外への発信を、自身が納得できる感覚で増やす生き方を感じます。

*****

【テーマ】ただのペットと、それに名前をつける。

画像:Aさんの画3_置換え〔画の注目ポイント〕
右の小鳥は正面を向いている。描いた人の視線を感じながら飛び立つ雰囲気。

《黒須より》
左の小鳥が「ただのペット」、右の小鳥が「名前をつけたペット」です。
右は正面を向き、翼が広がっています。対象に名前を付けると、それに対する「責任」が生じます。名付けされたことで対象は動き出し、飛び立つイメージが加わります。
人は言葉や行動によって他人に影響を及ぼし、「新たな視点」をお互いに与えます。それを、より積極的に「自らの使命」と捉えるのがセラピストであり、多様なアドバイザー、アーティストです。それは言い換えれば「本来のビジネスそのもの」と言えます。時を重ねるほどに、人は不可解で曖昧な要素がある存在だと分かります。ご本人の他の画も踏まえ、「幸せになるための確率」を高める要素に、不確実性を組み込んでいるように見えます。自分と丁寧に対話していることが、丁寧に描かれた画から伺えます。 自分を実験台とし、「幸せになるための確率」を知り、それを人に広げていくことで、より新たな「確率」(過去の「確率」のデータを基に、敢えて未知の世界に向かう)に入っていくようです。


2.Bさん(女性)が描いた画

【テーマ】浮かぶ

画像:Bさんの画1_置換え《ご本人のコメント》
長い間、自分だけの時間を過ごしてきました。やっと「外に出てみたい」…そんな気分が生まれました。

〔画の注目ポイント〕
穏やかな顔。周囲の空間。身体半分は水の中。足は描かれていない。

《黒須より》
まるで、ミレーの『オフィーリア』のようです。穏やかな顔で目を閉じ、自分との、そして周囲との心の距離が「分かった」ように見えます。自分に信頼を持てる時間を過ごせたのでしょう。 自分らしくいられる条件に気づき、自然体で人と関わることへの自信が見えます。閉じた目、足(動くためのパーツ)が描かれてないことや、周囲が空白であることから、まだ、積極的に人と関わる段階ではないことも自覚しています。意識として納得できたことが、未来への行動の条件になると思います。自分を守りながら、徐々に人との交流が増えていくことでしょう。
(8年前に実施したセッションに参加された際のメモを持参されていました。本当に嬉しい再会でした)


3.Cさん(女性)が描いた画

【テーマ】水面

画像:Cさんの画1_置換え〔画の注目ポイント〕
斜めの木。水面や周囲が動いている。

《黒須より》
このテーマは、穏やかな画を描く人が多いのですが、斜めの木と、それが水面に映っている様子が描かれています。周囲の「気」にも動きがあることから、心身ともにじっとしていることを好まないことがうかがえます。心の動きが速いと判断力にもスピードが伴うので、素早い決断力を持っている反面、時には自他の言動への「思い込み」が生じることもあるかもしれません。 なので、時折、意識的に「白紙の状態(静かな水面のような状態)」になって人を見ることが必要になります。木が大きな球体(動きがある)の上にあるようにも見え、新たな始まりに委ねる感じもします。

*****

【テーマ】余裕がある人、無い人
 *「余裕」とは特に定めたものではなく、様々な項目や物事を考える。

画像:Cさんの画2_置換え

〔画の注目ポイント〕
(左の画)直線 (右の画)迷路的。

《黒須より》
左に描かれているのが「余裕がある人」、右に描かれているのが「余裕が無い人」です。
「余裕がある人」は、人との関わり方について初めから「答え」を持っていることが多く、分かりやすいものです。目の前にいる人に求めるものを、最初からほぼ決めています。
一方、「余裕が無い人」は、決断しても迷いやすい傾向があります。「余裕が無い人」との関わりが難しいと感じるのは、「余裕が無い人」は、一人にいろいろな事を求めがちだからです。直線(左)と、とりとめなくも延々と連なる曲線(右)により、それらが分かりやすく表現されています。両者との適度な関わりで気づくことがあります。自分に自信が無いときは右の画のようになることも理解しているようです。人との関係に悩むときは、あまりそれに固執せず、「相手まかせの時間」を持つことでストレスを軽減できます。


4.Dさん(女性)が描いた画

【テーマ】自分が思う「かわいげのない子供」

画像:Dさんの画1_置換え《ご本人のコメント》
これは自分ですね。

〔画の注目ポイント〕
目と口の形。耳が描かれてないこと。

《黒須より》
このテーマでは、潜在的に今の自分自身について「カワイクナイ」と思っていることが描かれます。対人関係にとって「鍵」となるテーマです。
情報を耳よりも目で感じ取る傾向が強いようです。人の表情から感情を読み取る能力が高いと思われます。ただ、笑っている表情の中から悲しみの感情を読み取ったとき、それが全体の中の1割に過ぎないとしても、10割と捉えてしまうこともあり得ます。自分の中にある「人の表情からのリーディング能力」のバランスを意識すると、心はかなり楽になると思います。

*****

【テーマ】楽しい自分

画像:Dさんの画2_置換え

〔画の注目ポイント〕
耳が描かれている。笑った口元。動きのあるヘアスタイル。

《黒須より》
上の「かわいげのない子供」の画を踏まえて、今度は「楽しい自分」を描いていただきました。
目が可愛く、ヘアスタイルも自由で、口元が笑っています。上の画に基づく自己情報を、下の画に変化させることが出来ています。
「より楽しそうな自分」を画で描くことで、自己を変化させることが可能になります。体験することで自然に表情が変わるのがベストですが、意識して表情を変える……つまり「カタチ」から入るのも有効です。内面と外面の関係に高いセンサーをお持ちだと感じます。


5.他のテーマの画の紹介

【テーマ】「好きな色の川」に浮かんでいるもの、「あまり好きではない色の川」に浮かんでいるもの
画像:他テーマ1_置換え

(左上)好きな色の川
(右下)好きではない色の川

画像:他テーマ2_置換え

(左)好きではない色の川
(右)好きな色の川

画像:他テーマ3_置換え

(左)好きではない色の川
(右)好きな色の川

《黒須より》
私たちは「嫌だな」と思うと、それに加速して、感覚を上乗せします。「いいな」と思うと「いいこと」を上乗せしていきます。
人は生活していく上で、「好き・嫌い」を分類をする傾向があります。その方が暮らしていく上で“楽”だからです。それはそれで悪いことではありませんが、自分も他人も変化しているので、時には関係を見直すことも必要です。自分が思う「いい人」の条件も厳しいままにしておかず、生きることが“楽”になるにつれて、徐々に緩くするのも一案です。心はいつも動いているので、時折、現実をトータルに俯瞰することです。それが「豊かさ」――お金や仕事ではない、「人にとっての真の豊かさ」とは何かを知る智慧にアクセスすることにつながります。周囲の意見を聞くことは大切ですが、必ずしもその通りにする必要はありません。子供が危なそうな階段を嬉々として登ろうとするように、私たちは、敢えてリスキーな方向へ向かうことがあります。私たちには、自分を生かせる、自分らしくいられる状態や環境を求め創り、楽しい方向に行く「本能」があります。 恐れることはありません。