画を描くことで心の状態がわかり、問題の本質が明らかになることは、ご理解されたかと思います。でも、それで「終わり」にしては、何の解決にもなりません。問題を解決するにはどうすればいいか考え、実行することが重要です。
この「自分で考える」ということが重要だと当スクールは考えます。もちろん、セラピストもアドバイスをしますが、最終的に行動するのは自分自身です。
「自分で考えること」が重要なので、自分を客観的に見たり、あるがままを受け入れることが必要になります。その過程で、他人とのコミュニケーションも求められます。
心に厚い壁をつくっている人は、外側から自分を見る経験に乏しかったり、他人から意見を言われることを拒絶する傾向にある人が少なくありません。しかし、そこに画という“鏡”を置くと、心の壁を楽に越えることができます。心の状態が、目の前の画に映し出されているのですから、自分を素直に客観視できますし、他人のアドバイスも素直に受け入れることができます。
このように、当スクールが提唱するアートセラピーは、ただ画を描いて“心の状態”を把握して終わり、というものではありません。内面を認識した上で、次にどうつなげていくか……むしろ、そちらのほうが大切だと考えています。
- 「アートセラピー」名称は、広い意味では、音楽や演劇などによるセラピーも含みます。ただし当スクールでは、絵画によるセラピーに限定して呼称しています。
- 当スクールでは「画」と「絵」を区別しています(読み方は、どちらも「え」です)。『画』は、自分の明確な意識が介在しない「え」のことです。その人の作為――「こう描けば、他人はこう見てくれるだろう」とか「誉めてもらえるように上手に描こう」などと考えないで、与えられたテーマだけに基いて描かれた「え」のことです。「夢中で描いた“え”」と言ってもいいでしょう。
したがって、描き始めた時点では、どんな仕上がりになるかは本人にもわかりません。パーソナルセッションや企業・団体セミナーのアートセラピーで描く「え」は、こちらです。『絵』は、ある目的のもとに、目的に添うように、計画的に描く「え」をいいます。仕上がりの結果を想定した上で描き始めるわけです。こちらは「冷静に描いた“え”」と言えるでしょう。一般的な絵画はこちらです。また、アートセラピスト養成講座で描く「他人のために描く絵」もこちらです。
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