タイトル画像:アートセラピーについて

4.日本のアートセラピーは発展途上

アートセラピー(Art Therapy)は、20世紀初頭にアメリカで誕生しました。絵画に精神分析の理論・手法を応用したマーガレット・ナウムブルグ女史(1890〜1983)が“先駆者”とされています。
その後、アートセラピーは精神医学界を中心に欧米で大きな広がりを見せ、1960年代後半には、アートセラピー専門の研究団体が、イギリスとアメリカで相次いで設立されました(BATT:The British Association of Art Therapists/英国芸術療法士協会、AATA:The American Art Therapy Association/米国芸術療法協会)。

画像:指導中の黒須美枝アメリカでは、さらに大きく普及・発展しました。多くの大学や大学院にアートセラピーのカリキュラムやコースが設けられ、専門的な教育が行われるようになったのです。社会的に通用する資格制度も設けられました。こうした背景があるだけに、アートセラピーの専門家――「アートセラピスト」の社会的な認知度も高く、活躍の場も、医療の現場はもちろん、福祉や教育の現場などにも広がりつつあります。すでに“市民権”を得ているわけです。

一方、わが国では、アートセラピーの普及が、欧米に比べて大きく遅れています。「日本芸術療法学会」の設立はアメリカとほぼ同時期でしたが(1969年)、専門の教育を行う場がなかったこともあって、今なお、一般的な認知度は高くありません。アメリカのような資格制度も、長い間ありませんでした(※注1)

それでも、医学や心理学に付随してアートセラピーを学んだ方や、欧米で専門教育を受けて帰国した方が、アートセラピストとして地道に活動して来られました。そのお陰で、近年、ようやく社会的な関心が高まってきています。医療の臨床現場にほぼ限られていた活躍の場も、福祉施設や教育機関へ広がる兆しを見せています。

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