タイトル画像:アートセラピー絵画

2.心にプラスの影響を与える絵画

絵画には、描いた人の“想い”が込められています。題材、構図、色彩、さらに大きさや額も含む全体が、画家の“内なるメッセージ”を表現しています。絵画は、それ自体が「自己主張する存在」であり、周囲の空間に強い影響を及ぼします。
したがって“場”と絵画の「整合性」には、気を配る必要があります。「その場にふさわしい絵画」があるのです。部屋の様式(和室か洋室か)はもちろん、広さや壁の色、窓の位置(採光)、さらには部屋の目的(何のための部屋か)によっても、ふさわしい絵画は異なります。

画像:アートセラピー絵画(その2)絵画は飾られた瞬間から「環境」の一部になります。人は環境に敏感です。絵画が“場の目的”と整合していないと、空間に「ズレ」が生じます。私たちの潜在意識は、それを鋭敏に感じ取り、心のバランスを乱します。「何となく居心地が悪い」「この絵を見ていると疲れる」という違和感は、心が不安定になった状態です。

その一方で「理由はよくわからないけれど、見ていると気持ちが落ち着く」という絵画があります。そうした絵画の前には、自然に人が集まります。潜在意識は正直です。

絵画と“場”のマッチングが成功した時、絵画は“場”と一体化します。前述した「環境の一部になる」から一歩踏み込んで「環境に溶け込む」のです。
 絵画は「自己主張する存在」ですが、“場”の環境に溶け込んだ絵画からは、声高に訴えかけてくるような主張は感じられません。といっても、主張が“場”の中に埋没してしまったわけではなく、見る人の心には、確実に届いています。それはささやきかけてくるようでもあり、見る人も絵に語りかけたくなるような、相互コミュニケーションにも似た心の交流です。声高でおしつけがましい主張より、むしろ強い共感をもって受け止められます。

“場”の環境に溶け込んだ絵画は、ふだん、その存在があまり意識されません。しかし、そこから無くなると、途端に何だか落ち着かなくなります。その場にあるだけで、知らず知らずのうちに人々の心を安定させ、活力を呼び覚まし、目的にかなった室内環境を整えているのです。

そんな絵画が応接室にあれば、お客様とのコミュニケーションが円滑に進む空間になり、会議室にあれば、心のリラックスによって脳が活性化され、活発な討論や、アイデアの発想もしやすくなるでしょう。オフィスだけに限りません。病院なら、廊下などに、患者さんが「早く元気になろう」と前向きになるような絵画を飾るのが効果的です。家庭のリビングに、気分を明るくする絵画があれば、朝は元気に出かけることができ、夜は一日の疲れが癒され、家族の会話も弾むようになります。

このように、心にプラスの影響を与える絵画、知的生産性を高める絵画を「アートセラピー絵画」と呼んでいます。

トップページに戻る

無断転載、複写を禁止します。(C) Art Therapist Academy, 2005〜